2017-10

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

サイコホラーもどき、だろうか

了です。
陛下はアレに使うアレをどこから調達してるんだろうなあ、と考え始めたらできてしまった思いつきだけの話を晒してみます。やっぱりアレはこうやって調達している気がする。
どう分類していいか分かりませんが、陛下(印象:愛している、好感:好意)とタナッセ(印象・好感ともに気に食わない親友)メインの話です。どちらかと言えばほのぼの日常系…なのか?
 
あと、うごうごしたアレとかわさわさしたアレとか、タナッセが口に詰められたアレとかが苦手な方はご注意ください。たいした表現はありませんが出ます。けっこう大量に。タナッセいじめとも言う。
タナッセはアレが超苦手、という認識です。
 
 
〈木箱の物語〉
 
それはレハトが今まで見たことのない表情だった。
「お主らもだいぶ大きくなったな。来月が楽しみだ。ほら、もっと食すがよい」
安心しきったような顔に、恍惚とも呼べる慈母の笑みを浮かべて。
リリアノは中庭で一人、片手で抱えられる大きさの小さな木箱をのぞき込み、そ
れに話しかけていた。
なんだか見てはいけないものを見てしまったような気がして、レハトはそこを立
ち去った。

「母上が?謎の箱?」
「陛下の侍従の人に聞いたんだけどさ。外出の時いつも持って出る、謎の箱があ
るんだって」
広間の片隅、レハトとタナッセはカップを片手に向かい合っていた。側にはサニ
ャが控えている。
「それをお前は見たというのか」
「うん、中庭でね。なんだかとっても、幸せそうだった」
言うべきか迷ったが、レハトは中庭で見たものを詳しく説明する。タナッセの表
情が少し曇った。
「母上も、お寂しいのだろうな。おおかた子鼠でも飼い始めたのだろう。あれは
大人しいし反抗しない、飼いやすい生き物だからな」
子は親の前で笑うのが唯一の親孝行―そんなことをリリアノが言っていたのを思
い出す。
タナッセは年が明ければここを出ていく。母の側にいながらにして子らしいこと
をできなかったと自責している彼にとっては、微妙な話に違いなかった。
反面、レハトは憮然とした顔をしている。
「でも、『お主ら』って言ったよ。子鼠を複数、普通あんな箱で飼う?」
「どうしてお前はその箱をそんなに気にするんだ?母上が何を飼おうが構わんだ
ろうに」
「よくないっ!陛下は僕にはあんな顔、見せたこともないんだよっ!」
レハトの大声に数人の貴族がこちらを振り向いてしまい、タナッセは頭を抱える
。明日には王と14歳の寵愛者の仲が、無礼会の面々の酒の肴にされるのだろう。
「だからタナッセが気に病むことなんてない。陛下は寂しかったら僕のところに
来ればいいんだから」
少年は声のトーンを上げたまま、自信満々に言い放ってみせる。頭が痛い。
「分かったから少し声を落とせお前は!品性のかけらもない」
タナッセには信じられないことだが、この少年はリリアノを愛している。不思議
なのはリリアノのほうもまんざらではないらしく、ことあるごとに彼を呼びつけ
ては供をさせているらしいことだ。
息子が成人して久しい故、可愛い息子が増えるのは歓迎だぞ…そんなことを言っ
ていたらしい。要するに、やはり自分が悪いのだとタナッセは胸を痛める。
そんな彼の思いをよそに、レハトはリリアノと何をした何を話したと逐一鼻高々
に自慢してくる。タナッセとしてはどうせ子犬代わりに遊ばれているだけだろう
と思うものの、実に気に食わない親友である。
「残念ながらお前の目論見は外れたな。母上はお前と違って人畜無害なペットを
見つけだしたらしいぞ」
「認めないね僕は」
レハトはふんと鼻を鳴らした。
「認めない、と言ってもどうする気だお前は?まさか鼠に嫉妬するほど愚かな奴
だとは知らなかったぞ私は」
「せめてあれが何なのか、なんとしても突き止めてやる。だから付き合え。どう
せ暇でしょ」
「何故私がお前のくだらん嫉妬につき合わなければいけないんだ」
「あ、そういうこと言うんだ。ならいいよ、ヴァイルを誘うから」
タナッセの顔が青ざめた。ヴァイルとレハトが組んで悪戯を始めたら、ちょっと
した台風どころの騒ぎではないのは目に見えている。
せめて母の平穏を守るため、それだけは阻止せねば…!
「分かった。つき合ってやろう」
タナッセが渋々そう言うと、レハトの瞳が輝く。こういう所は年相応なのに、と
タナッセは痛むこめかみを押さえた…。

「陛下はよく部屋に、晩餐の残りの魚の頭やら肉の脂身やらを持ち帰っているら
しい。これはうちの侍従に聞き出してもらった」
「魚の頭?鼠にやるにしては不衛生なものを」
「そうだよね。小動物相手ならもっと、野菜とか果物をあげそうなもんだ」
「だとすると犬…いや、隠す理由がないな。まさか猫の子を拾ってきて飼ってい
る、とか?」
「猫が木箱に入る?」
「入らんな…ううむ…」
二人は額をつき合わせて考え込む。
なんだかんだでタナッセも、この状況を楽しんでいるようだった。
「タナッセのほうはどうだった?」
「侍従の話を立ち聞きしただけで、関係あるのかは知らないが。去年、母上の部
屋で大変な騒ぎが発生したそうだ。なんでも、部屋中に大量の死体が…とかなん
とか」
「死体?」
物騒な言葉に、レハトは眉をひそめる。
「人間の死体であったら、いくらなんでも噂になっているだろう。母上が育てて
いる何かの死体、と考えられる」
「つまり、陛下が箱で飼ってるアレだね」
「ああ。一部しか聞こえなかったが…母上が、居並ぶ侍従を後目に、自らの手で
それを叩き潰して殺した。あまりに素早い手際だった、と」
飼っているもの―それも、あれほどまでに可愛がっているもの―を叩き潰して殺
す、とは穏やかではない。まして、部屋いっぱいに死体が散らばるまで。レハト
の知るリリアノは、苛烈ではあってもそのような凶行とは無縁な女性だった。
「怖いよそれ…なんで陛下はそんなことを?」
「分からん。どうやら母上には、私の思いもつかない生活があったようだな。お
前は心当たりないのか?」
「ないよ」
「何やら楽しそうに話をしておるな。レハト、タナッセ」
唐突に聞き覚えのある声が聞こえて、二人は飛び上がった。
書類の束を抱えた文官を従え、リリアノが二人のテーブルに近づいて来る。その
腕にはあの箱がしっかりと抱きしめられている。
「母上っ!?どうしてこちらへ」
「通りがかっただけだ。お主らがあまりに楽しそうに話し込んでおるのでな」
二人は引きつった笑みを浮かべる。何故このタイミングで来るのか、一瞬アネキ
ウスを呪った。
その表情をどう解釈したのか、リリアノはにやりと笑っていう。
「あまりタナッセをいじめるでないぞ、レハト」
「あの、母上。その箱は…」
タナッセが恐る恐る尋ねる。返事はすぐに返ってきた。
「ああ、気にせずとも良い。タナッセ、特にお主は知らぬほうが幸せだ」
意味深な言葉を残し、リリアノは廊下の向こうに姿を消した。タナッセはふぅ、
と無意識に詰めていた息を吐き出す。
「知らないほうがいい、だと?母上は何か隠し事をしているのか」
「やっぱり、あれは何か人に見せられないものが入ってるんだよ。
だけどそんなものを抱えてながら、僕に話しかけてくるなんて愛されてるんだね
、僕」
「どうしてそうなる。単にお前のその子供っぽい能天気な顔が話しかけやすかっ
ただけだろう」
「僕が成人したら、父上って呼んでくれる心の準備はできてる?」
「馬鹿を言うな。こんな乳くさい義父ができてたまるか。自分が赤ん坊として可
愛がられている自覚をもつのだな」
いつものような応酬をしながら、二人の心にはリリアノの先程の一言が引っかか
っているのだった…

数日後の夜。タナッセは所用でリリアノの部屋に向かっていた。
よくあることではない。幼い頃はよく母恋しさに意味もなくその部屋に向かった
ものだが、そんな習慣はとうに耐えている。入れてもらえることはほとんどなか
ったのだが。
ドアをノックする。侍従は出払っていていないようだ。随分不用心な。
母上、と声をかけようとしてドアの隙間から漏れ聞こえてくる囁き声にぎょっと
する。間違いなく、リリアノがあの箱に話しかけているのだ。
だが、その内容はレハトから聞いたような穏やかなものではなかった。
「お主らも十分大きくなった。もう針を刺しても皮が破れるようなことはあるま
いな」
針を刺す。その残虐な響きにタナッセの足は止まる。
箱に入っているのがなんであれ、小さな生き物であることは間違いないだろう。
母はそれに、下手をすれば皮が破れるような針を刺して虐待しようというのか。タ
ナッセの脳裏に、もだえ苦しむ子鼠の姿が浮かんだ。
その声はあくまで穏やかで、タナッセの背に冷たいものがつたう。こんな母は知
らない。
かたかたと箱を開ける音が聞こえる。
「ふむ…一番大きく育ったのはお主か。それならば、一番最初はお主だな」
箱の中の彼は、いったい何をされるというのだろう。息をひそめるタナッセの耳
に、次のせりふが飛び込んできた。
「さもなくば、去年のようにお主は大人になってしまうだろうから―」
心臓が飛び上がった。
甘えることのできなかった、幼い自分。
その代わりのように愛されているレハト。
赤ん坊のようにあやされていたというあの箱。
去年叩き潰されたという箱の中身。
大人になってしまった自分と、まもなく大人になるレハト―
いろいろなものがぐるぐると混ざり合い、渦を巻く。
母はそれを愛し、育て、やがてそれらが大人になろうとすると針を刺したり、叩
き潰したりして無惨に殺しているのだ―
母上、あなたの求めているものは。
あなたはそんなにも、追いつめられていたのですか。
よろめいた拍子にドアの取っ手に手がぶつかり、音を立てる。
「誰かおるのか」
そんな声が聞こえたが、タナッセは構わず走り出していた―

「レハト!レハト!」
夜中ですからというサニャの控えめな抗議を無視し、タナッセはレハトの部屋に
駆け込んだ。レハトは寝台に入ったところだったらしく、眠い目をこすりながら
起き出してくる。
「なんだよもう…何時だと思ってるのさ」
「お前、母上のことは諦めろ」
「ちょっと待って、いきなり何なのさ」
「今は良くても、成人したときに絶望することになるぞ。成長したお前に望みな
んてないんだ」
「話がぜんぜん見えないんだけど」
「私のせいなのか。私が息子として、母上に関わってこなかったから。そうなの
か」
その肩が小刻みに震えている。とりあえず落ち着けるのが先決だと、レハトはサ
ニャにお茶を淹れてくるよう頼んだ。
その間もタナッセは途切れ途切れに、見聞きしたことを話す。聞いているレハト
の顔も険しくなってゆく。
そしてドアがゆっくりと開き…サニャが戻ってきたのかと顔を上げたレハトの目
に映ったのは
…箱を抱えたリリアノだった。

「ヴァイルの悪戯かと思うたら。何をやっておるのだ」
床に座り込んだタナッセを一瞥し、彼女は言った。
「母上…母上…申し訳ありません…」
タナッセは放心したように繰り返すしかできない。
「ああ。箱の中身を見てしまったのか?それはすまなんだ。お主にはちと刺激が
強かろう」
「陛下っ!」
そこにレハトの声が乱入する。
「そんなに僕では不満ですか!僕は大人になっても、変わらず陛下を愛し続ける
というのに!」
「ちょっと待て。何の話だ」
「しらばっくれないで下さい!ちゃんと僕を見てほしいんです!」
「やめろ、レハト…」
騒ぎの中、詰め寄ったレハトがタナッセにつまづいてバランスを崩し、リリアノ
に受け止められる拍子に箱の蓋が外れ、中身が宙を舞い…
その瞬間、レハトは全てを理解した。タナッセはさらなる本能的な恐怖に硬直し
た。反射的に口を覆っているのは、かつて与えられた嫌な経験のためか。
白い、ぷっくりと太った、小さなそれらが、
ゆっくりと、タナッセの体中に降り注ぐ…
 
「で、陛下。これは何なんです」
「見ての通り、釣り餌用の蛆虫だが。サシとも言う」
「いやそうじゃなくて。何もわざわざそんな箱で育てなくても」
箱の中身を浴びてしまったタナッセは、今にも気絶しそうに体を震わせながらへ
たりこんでいる。下手に動けば潰してしまいそうで動けないのだ。レハトはサニ
ャから箒を受け取るとその頭と肩を払った。
「消耗品であるし、いちいち調達させるのも侍従が面倒だろう。というわけで飼
うことにした。こちらのほうが栄養状態も良いしな」
「なんで持ち歩くんです」
「去年のことだ。多忙の折りで、確認するのを忘れておったら一斉に成虫になり
おってな…
部屋付きの侍女も逃げまどう大惨事であった。仕方なく、我が手ずから退治した
ものだ。
それ以来、放置するのが怖くなった」
「はぁ…」
村育ちのレハトにとって蛆虫は、さして抵抗はないものの便所や放置された生ゴ
ミに湧く汚いものという認識しかない。
なまじそういうものを見て育っていない宮殿の人間なら、蛆虫を大事に育てるこ
ともできるのだろうか…
少なくともタナッセにはできない様子であったが。
「こやつらは餌をやればやるだけ成長する。自らの成したことの結果が即時返っ
てくる存在というのは良いものだぞ」
「…そうですか」
リリアノはくすりと笑い、膝をつくとタナッセの肩に乗っている一匹をしなやか
な指でつまみ上げた。
「レハト、タナッセ。お主らは何か誤解しておったようだが…
こやつらはあくまで餌用。我は本当に大切なものは、木箱に閉じこめておいたり
はせぬよ。安心するが良い」
呆然と立ち尽くすレハトの横で、タナッセは目に涙を浮かべただこくこくと頷く
ことしかできなかった―。

かくして城のごくごく一部を騒がせた謎の箱騒動は終わりを告げた。
レハトとタナッセもすっかりいつもの調子に戻り、相も変わらず広間の隅で悪口
雑言をぶつけ合いながら談笑している。
ただレハトがリリアノに呼ばれ、帰ってきた時に、タナッセがしつこく「手は洗
ったのだろうな?」と確認する光景だけが、新たに付け加えられたという―
 
〈FIN〉
スポンサーサイト

● COMMENT FORM ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://hellodreamhunter.blog83.fc2.com/tb.php/17-7a34640a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

そろそろ冬眠とかしたい «  | BLOG TOP |  » 結局ゲーム三昧かよというツッコミは却下

プロフィール

maco

Author:maco
「冠を持つ神の手」を語ったり二次創作したりするブログです。

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (3)
はじめに (1)
二次創作(maco) (3)
二次創作(了) (3)
語り (12)

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2カウンター

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。